クリティカルロマンス


「美里のことを大切に思うばかりで、それが逆に不安にさせちゃったみたいだね。もっと強いところも見せなくちゃ、男として魅力がないな」
「そんなことない。違うの……私はそんな高柳さんが好きなの。それなのに……」


言葉を詰まらせて泣き続ける私を、高柳さんの腕が包み込んだ。

温かくて、一番安心する場所だった。

強さっていうのは、こういうことを言うんだ。
強引に誰かを奪ったから強いということじゃない。

誰かを守れる、安心させてあげられる、それが強さだって今ようやく気づいた。

髪を撫でてくれる高柳さんの手が愛しくて、抱きしめ返す腕の力を強めた。


「もうその名前で呼ぶのはやめようか。二ヶ月後には、美里も同じ名前だよ?」
「そうだね」


そう言ってふたりで笑い合った。

ほら、高柳さんのそばにいるだけで、こんなにも幸せな気持ちになれる。
そんな人は、どこを探したって見つけられやしない。

たったひとりの、私だけの大切な人。


「それじゃ、そろそろ中に入れてくれる?」
「え?」
「たまには強引に攻めてみようかなって」


高柳さんははにかむように笑った。



END