「ごめんなさい」
「どうして美里が謝るんだ」
「だって……」
高柳さんを裏切るところだったの。
強さをはき違えて、ただ自分の我を通すだけの人にちょっとでも心惹かれるなんて。
高柳さんにあんな暴言まで浴びせて。
どれほど悔やんでも足りない。
それなのに、高柳さんはそっと私の肩に手を置いて、いつもと変わらない優しい目を向けてくれた。
どうしてここまで私なんかに優しくできるの?
涙が一気に溢れ出す。
「……ごめん。美里を泣かせるつもりなんてなかったのに」
優しく頬を撫でる温かい手に、余計に涙が止まらなくなる。
水の中で空気を求めて喘ぐように苦しくて、高柳さんを傷つけたことが悲しい。
「違うの……私ね……」
「もういいよ。どうも俺は、女心というものが分かっていないらしい」
高柳さんがちょっと困ったように笑う。



