私を宿泊客と間違えたのかフロントのスタッフの丁寧な応対を断り、スマホで高柳さんのメモリを呼び出した。
それなのに、一向に電話が繋がらない。
ここで諦めてなんていられない。
こうなったら、なにがなんでも捕まえて、きちんと謝る。
今そうしなければ、もう私たちはダメになるような気がしてならなかった。
タクシーに飛び乗り、高柳さんのマンションへ車を飛ばす。
あれほど鬱陶しいと思った彼の優しさを、このうえなく愛しく思う自分がいた。
今すぐ会って、伝えたい。
胸に確かにある想いを彼に。
ところが、何度インターフォンを押しても応答がない。
耳を澄ませても、中からは人の気配を感じることはできなかった。
……もしかしたら、もう高柳さんには会えないのかもしれない。
スマホは繋がらない、ホテルにもマンションにもいない。
どうにもならない不安に襲われた。
永遠を求めたくせに。
欲しがったくせに。
結局手放したのはほかでもなく私自身だと気づかされた。



