fairy3 空の物語 中



「入るぞ」

部屋の扉をノックし俺は部屋の中に足を踏み込んだ。

『一葵か? どうしたんだそんな怖い表情を浮かべて』

「そうか? いつも通りの顔だけど?」

俺はベッドから体を起こしたラースの側に寄る。

「俺が来る度にそうして無理に体を起こさなくてもいいんだぞ?」

『そうも行かないよ』

ラースは今から二週間前くらいに目を覚ました。

アスナからはしばらく目を覚まさないとは聞いていたけど、二ヶ月も掛かるなんて思ってもいなかった。

「何か飲むか?」

『いや大丈夫だ』

「そうか? ならいいけど」

俺は近くにあった椅子に座る。

『体の方は良いのか?』

「まあね。いくらか動かせるようになったよ』

ラースはそう言うと俺に見えるように指を動かしてくれた。

「ラース……」

ラースは俺を庇って大怪我を負った。

あの時のことは本当に感謝している。

もしあの時ラースが助けに入ってくれなかったら、俺は今頃ここに居なかったかもしれない。

「ラース。あの時は本当にありがとう」

『またそれか? その言葉はいったい何度目だ?』

ラースは少し呆れたように苦笑した。

確かにここに来る度にラースにお礼を言っている気がする。

「い、良いだろ別に本当のことなんだからさ」

『じゃあありがたくその気持を貰っておくよ』

「おう、そうしてくれ」

そこで俺たちの会話が途切れ沈黙感が部屋の中を漂った。