きつく抱きしめてくるアルスに胸が苦しくなる。
私の頭や背中を愛おしそうに撫でてくるアルスに、キュッと下唇を噛み締めた。
「手助けするだけ、そう思ってたのに。一目見た時からなぜか心が奪われてた。きっとこの子といると楽しくて、幸せなんだろうなって考えたら止まらなくなって。手を繋ぐだけなのに胸が高鳴って……意識しちゃいけない、そうは分かってても無理なんだ」
嬉しい言葉なのに、切なくなる。
アルスはそっと抱きしめる力を緩めて私の額に、自分の額を当てた。
「カンナ、俺の物になって。もう気が狂いそうなくらい、君が愛おしくてしょうがない」
「アルス……」
「好きだ、カンナ。お願いだから……俺の傍にいて」
ゆっくりと唇に優しい温もりが広がっていく。
アルスの吐息と私の吐息が交わっていく。
落し物なんかしなきゃ良かった。
でも、アルスには会いたかった。
矛盾だらけのこの感情に喝を入れるかのように、アルスの温もりが遠ざかっていく。



