徐々に詰め寄ってくるものだから、立ち上がって距離を取る。


全身の痛みが走るものの、ここはなんとかして逃げなきゃ。



「その盗賊が私に、一体何の用なの」



キッと睨みつけると、なぜか嬉しそうに男ーーガザンは笑った。



「威勢のいいトリプラーだ。そういう奴嫌いじゃないぜ。それにその目は好きな目だ」


「いい加減にして」


「トリプラー、それは迷い人。俺らの世界とは全くもって違う世界で生きる奴ら。そんな奴らは物珍しく、俺たちには持っていない知識がある」


「だから、一体なんだっていうのよ」


「そんな奴らを物珍しがって欲しがる貴族共がいるんだよ。しかも高額で買い取ってくれるしな」



全身が凍りつくようなその言葉に、私は若干足が縺れる。


その隙を見てガザンは一気に距離を縮めてきた。