距離を離していくアルスに、心臓のドキドキを抑えるのにそっと胸を掴もうとした。
だけどその前に首元から下がるネックレスの存在に気づいて、綺麗に光るさっきのあの花を触った。
「ラグレント。この時期の僅かな時にしか咲かない貴重な花なんだ」
「そうなんですか……すごく、なんか、見てると落ち着きます」
胸元で咲く花をそっと撫でると、しっとりとした感覚が伝わってきた。
「お守り」
「え?」
「帰る時のお守り。迷わないように」
「ふふ。ありがとうございます。大事にします」
そう答えると、そっと右手に温もりを感じた。
どこか苦しそうな、切なさそうな、そんな表情をするアルスに何故か心が締め付けられた。



