大事なもの、それは一体何を指すんだろう。
財布は大事だから常に持ち歩いていたから無くしていないし、そこそこ大事なものと言ったら……大事なデータが入ったUSB程度だ。
考えれば考える程頭にモヤがかかっていくようで、私は一つため息を漏らした。
「カンナ……?具合でも悪い?」
心配そうなアルスの声に慌てて、首を振ってアルスを見ようとしたけれど、あまりの顔の近さに固まるしかできなかった。
「ア、アルスッ……」
「暗い顔はカンナには似合わない。どうか、君は笑っていて」
首に手を回されヒヤリと冷たいその感覚に、肩が跳ねた。
リン……と透き通るような音が小さく響いた。



