スっと離れたアルスの左手に、少しほっとしつつも寂しさを感じてしまう。
手渡された露店で飲み物と、サンドイッチみたいなパンを遠慮がちに齧り付いた。
じわりと広がる旨味と、さっぱりした後味が口いっぱいに広がって思わず笑顔が零れた。
「美味しい」
「この街の名物なんだ。気に入ってもらえたならよかったよ」
木陰の下でこんなにのんびりすることなんて、忙しい日々から考えたらできない。
今は思う存分この世界を堪能しよう。
……でも、本当に私はこの世界に何かを落としてしまったのだろうか。
普通に楽しんでいるけれど、本来の目的を忘れてしまいかけていた。



