意識していなかった右手がまたしても熱くなる。
そんな私とは違って落ち着いているアルスは、はははと否定も肯定もせずに笑った。
「彼女とは観光に来ていて。思い出に一つ花をください」
「あら、そうだったのね。ならーーこの花なんてどうかしら?」
お姉さんが示したのは、光の加減で白にも青にも見える不思議な花だった。
見たこともない花だけれど、何故か懐かしく感じる。
じっとその花を見つめていると、横からアルスの視線を感じアルスを見た。
「……じゃあ、これ一つ貰おうか。あ、スデューテットにしてもらえるかな?」
「もちろん。100ベギールです。少々お待ちくださいね」
そう言いながら何か魔法をかけ始めたお姉さんを見つつ、アルスがお金を出す音にハッとした。



