”そこ”はとても冷たい場所だった。
まるで足元から凍えてしまうくらいに。
それでも、私はなんとか前に進もうとする。
だけど、足がすくんでなかなか動かない。


なんて、自分は無力なんだろう。
なんで、自分はこんなに弱い生き物なんだろう。


そんな思いが次から次へと浮かんでは消える。
先の見えないこの場所で、永遠に戻れない恋しい温もりを求めて泣いた。

泣いたって、何も解決なんてしないのに。


「…すい…」


私の口から零れ落ちる言葉はただ一つ。


「ひ、すい…」

「緋翠、緋翠、緋翠…っ。…大好き、だよ」


こんなにも、こんなにも…大好き、だよ…。

でも、届けられない。
もう…届かない。


だって、自分から手放してしまったのだから。
あの、温かな手を跳ね除けてしまったのだから。