夢の中では、全てが腐敗していた。
私はそれらを払拭する為に光り輝く剣を手にして、まるで茨を裂くように振り回していた。

緋翠の笑顔が遠い。
緋翠の全てが濁って見える。


もう、いやだ。


こんな弱い自分なんかなくなってしまえばいいのに…。

そんなことを思って覚醒した私は、妙にはっきりした頭で…登校することを決めた。


「おはよう、茉莉江」

「わー!おはよー!海夏!大丈夫?体?」

「うん」

「でも、顔色悪いよ?」


心配そうに様子を伺う茉莉江に、薄く笑うと私は大丈夫だよ、と言って席についた。

「よぉ。海夏。風邪とかお前らしくねぇな」

そんな私を見てすぐに真人が声を掛けてきた。

私はそれでもびくりともせずに、皮肉を言う。

「えぇ。誰かさんのせいでね」

ドスの聞いた低い声は、真人をひるませるには丁度良かったようで、それ以上何も言わずに自分の席に戻っていった。


私は、誰にも屈しない。
そう、決めたんだ。

真人の嫌がらせは昔から変わらない。
緋翠の優柔不断さも…気の変わりようも多分。

好きだから…全てが分かる。
そんな都合のいいことはないけれど。
今なら、なんとなく…そう思える気がした。

私は病み上がりの怠さを持った体を、必死に動かして授業の準備をする。

いつ、緋翠と会えるのか分からないから…ほんの幾つかの不安を抱えて。