「なんで、あんたなんかとっ」

「へぇ?お前知らないの?」


にやり、真人は意地悪く笑う。
私は背筋が寒くなるのを感じざるを得なかった。

「な、にが…?」


このままじゃ、こいつのペースに嵌まる。
分かってはいても、これから何を宣言されるのか、私は気になって仕方がなかった。


「あいつ…前園さんだっけか?浮気してるぞ?」

「…え…?」


落ちてはいけない。
信じてはいけない。

それでも、真人からのその死の宣告は、私を撃ち抜き、身動きが出来ないようにしてしまう。

「うそ」

「だったら自分で確認してみれば?」

私は、その言葉を振り切るようにして、教室を飛び出した。


嘘だよ。
だって、緋翠はいつも私だけって言ってくれるもの。
私だけに優しくしてくれるもの。


まだ、大事な一線を越えていないだけで、私達の間はちゃんと繋がってるもの…。


そして、必死の思いで緋翠の教室へと辿り着く。

……。

そこで目にしてしまったのは…。


「ねぇー?緋翠〜?いつになったらあの子と別れてくれるのー?」


と、緋翠の首にしがみつく見知らぬ先輩と。

「んー。いつだろうね?」


と、面倒臭そうにそう答える緋翠の姿だった。


「…っ」


自分はネガティブだって言って、他の人への興味がないことを、私に散々アピールしてきたくせに。

それが全部、嘘だった?

私は、気付けばつーっと涙を溢していた。
そして、その場から静かに逃げ出して、今度はそのまま校外へと走り出した。