「…いや。今はやめとく。なんか暴走して海夏のこと壊しそうだし」

「…え……あ……なんか…ごめん…」

「や…謝んないで?全部俺が悪いし…」

ぽんぽんと撫でてくる手は果てしなく優しい。
その優しさが今は痛い。


やんわりと、でもしっかりとした拒絶。



緋翠は、こんな私のことをはしたないと思ってしまっただろうか。

あぁ、こんなんじゃ、茉莉花が言ったみたいに緋翠よりもネガティブになってしまいそうだ。


「じゃ、じゃあさ、今日は…ここから別々に帰ろ?」

「海夏…?」

「ごめん…ちょっと色々考えたい…」

「海夏…あの…さ」

「ううん!いいの!大丈夫だから!明日になったらちゃんと元気出すから!じゃ!」


今までくっ付いていた手を放して、踵を返すと私は全速力でその場を離れる。


落ちていく涙を緋翠に見せないようにして。