蒼と話す彼方の横顔を観察する。
長い睫毛、力無い目で、二重の線がよく見えるけれど、昨日の試合中はずっと食い込んでいて、目力も凄まじかった。
……彼方のことも、興味なんてなかったのに。
私はなんでこんなにも「野球」に心奪われてしまったんだろう?
疼く。胸が、心が。喉から手が出そうなほど、欲している。
私も、野球がしたいのだと……。
***
その日、帰宅後。
蒼は野球の練習があるからと着替えてからさっさと家を出てしまったので、家にひとりになった。
お父さんは仕事でいつも19時ぐらいに帰ってくるし、母はスーパーのパートに行っていて、蒼の練習がある日は練習を見学に行って帰ってきたり、行かなかったりとまちまちだ。
行く日は夜ご飯が昨日の残りだったり、もう用意してあったり、スーパーの惣菜になったりするのだけど、今日は昨日のカレーがまだ残ってあるから、練習見に行ってから帰って来そうだなあ。
いつもだったら私も友達の家に出かけたり、宿題をしたり、漫画を読んだりして夜ご飯までの時間を過ごすのだけど、今日は違う。
蒼が家を出たのを二階の部屋から確認したあと、お父さんとお母さんの寝室に向かった。
クローゼットの中に、お父さんのグローブがあることを知っていたからだ。
「……あった」
クローゼットを開けてすぐ、どんと目立つ場所にそれはあった。両手で持つ。意外と重いし、でかい。
蒼やお父さんの真似をして、左手にはめてみる。私には、大きくて重い。



