「唯兎くん、すごい」


「ありがとう」


「歌い手デビューしませんか」


「は?」



何言ってるんだこの子は。


唐突すぎない?


てか僕が歌い手?


無理でしょ。声がよろしくない。



「だってだって!これからも手伝ってもらおうと思ったら、お名前出さないと盗作になっちゃうじゃん!」


「いやいや、いいから別に!手伝うくらいいくらでもするし!」


「でもでも!この前柚月が来た時に唯兎くんが歌ってる動画見せてもらったもん!かっこよかったもん!」


「何見てんの!?」


僕が人前で歌ったのは中学3年の文化祭だから…和馬が送った!


絶対あいつが送った!


和馬に無理やり文化祭の有志に応募させられてその年は応募が多くて抽選だったのに、当たっちゃったから!!


もー、今度会ったら殴る。


ボコボコにする。できたら。



「唯兎くんもデビューしましょう。お歌作るの手伝ってくれるだけでいいの。


あと動画編集もしてほしい」



おいおい、最後のはめんどくさいから押し付けただけでしょ。




「唯兎くんみたいに、才能ある子は埋もれてたらダメだよ。みんなに見てもらってほしいもん」


…あぁ、わかった。


この子はきっと…不器用だ。


僕が認められることを望んでくれてる。