と思ったその時

「っ!逃げろ!」

棗の焦った声が聞こえた

そして同時に、走り出したように、砂を蹴る音がする

「こいつら・・・・・・ぜってーこの中で誰かが捕まらない限り追いかけてくるぞ!」

え・・・・・・?

誰かが捕まらない限り、追いかけてくる?

「ゆ、結月ちゃん・・・・・・!」

はあはあ息を切らしながら、聖歌が言う

「私、もうダメかも・・・・・・」

華奢な体つきの聖歌に、走りっぱなしはキツかったようだ

それに加えて、この状況下。どちらかと言えば内気で、小動物のような性格の聖歌に、精神的に少し荷が重すぎる

「結月、校舎に入って・・・・・・!」

後ろから声がした

これは・・・・・・美月だ

なんで・・・・・・と思ったけれど、口には出さなかった

美月は、聖歌の体を優先したんだ

・・・・・・・・・・・棗と、智也よりも

「わかった」

あたしたちは、一旦グラウンドに出た

そして、グラウンドに面している校舎への入口を目指す

その入口は、グラウンドの真ん中の前の方にあるから・・・・・・

「あった!」

上下左右に揺れる懐中電灯の光を頼りに入口を見つける

ガラスのドアを押し、開いた

南校舎の1階への入口は、暗かった

それでも臆することなく、躊躇いなく中に三人で入る

そして・・・・・・棗と智也を待たずに、そのドアの鍵を閉めたのだった・・・・・・






「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」

息を切らしたまま、その場に座り込む聖歌

かなり疲れたみたい

「大丈夫?」

「う、うん」

こくこくと頷き、ニコッと笑ってみせる聖歌

よかった・・・・・・・・・・でも

「棗と、智也は?」

ずっと生徒玄関の外を見ている美月に聞く