脱出可能枠は一つだけ

そして、レディーファーストということで、聖歌、美月、棗、そして最後に智也が出た

念のため、全ての窓を閉めておく。流石に、鍵とまではいけないけれど

そして────

「もぅいいかぁい」

『もういいよ!』

叫んで、一斉に走り出した

あたしと聖歌は懐中電灯を持っていない方の手を繋ぎ、横になって走る

ちらっと後ろを振り向くと

鬼が、窓を開けながらこっちに向かってくるのが見えた

暗闇でイマイチ分からなかったけど、どうやら男の子

まあ、この距離なら余裕かな・・・・・・っと思っていたら

「みぃつけた!」

突然、中庭にある花壇の影から人影が飛び出した

「えっ・・・・・!?」

その場にいる全員が(多分、美月を除いて)混乱した

この声、もしかして・・・・・・

「かくほしまぁす!」

女の子・・・・・・!?

さっと懐中電灯を向けると、それは水玉のスカートと白のブラウスを着た女の子が

あたしたちに目を向けていた

ニヤニヤと笑いながら、いまにも来そうな勢い

一瞬で、頭が真っ白になった

「逃げなきゃ・・・・・・!」

2人から逃れるため、あたしは聖歌と手を繋いだままグラウンドに向かった

「は?おいっ、ちょっと待て!」

慌てたような棗の声が聞こえてきたけれど、止まっていたら追いつかれるに決まってる

「え、ちょっと結月ちゃん?」

聖歌の戸惑うような声も、今のあたしの耳には入らなかった

逃げなきゃ。早く逃げなきゃ!

「・・・・・・」

何を考えたのか、少ししてから走り出す音が聞こえた

多分、これは美月

でも、なぜか

鬼の足音も、棗と智也の足音も聞こえなかった