脱出可能枠は一つだけ

美月がちらっと、棗たちがいた教室を見て、クイッと顎で合図をする

入れ・・・・・・ってこと?

それに気づいたあたしたちは、そろっと中に入り、机の影に身を隠した





タン・・・・・・タン・・・・・・タン・・・・・・

静かに足音が廊下から聞こえた

ゆっくり、ゆっくりと歩いていく

あたしたちは息を押し殺し、鬼が通り過ぎるのを待つ

タン・・・・・・タン・・・・・・タン

一度、足音が止まった

そっと扉を見てみると、閉めたドアのすりガラスの向こう側に、僅かながら影が見える

きっと、小さいから頭のてっぺん辺りしか見えないんだろう。このドアのすりガラス面積って、結構広いからね

タン・・・・・・タン・・・・・・

そして、足音は遠ざかっていった

「ふう・・・・・・」

完全に聞こえなくなった頃、あたしたちは机の隙間から這い出た

皆でため息をつく

良かった・・・・・・これで来られたら袋の鼠だったよ・・・・・・

「うまく、いったね」

「う、うん」

聖歌も安堵の表情であたしを見てくる

と思ったその時

ガラガラガラッ!

「っっ?!」

「え?!」

突然、扉が開いた

「くすくす・・・・・・みぃつけた♪」

とても陽気な声で、そう言い放った

そして────

「もぅいいかぁい」

まるで、かくれんぼのような・・・・・・ううん、かくれんぼの決まり文句を言い出したのだ

しかも、なぜか扉に顔を押し付け、こちらを見ない

「ま、まぁだだよ」

とりあえず、ここはそう答えた方がいいかもと思って、まだだと答える