脱出可能枠は一つだけ

こんなの・・・・・・あり得ない

ふたりが取り乱すのも、至極当然なのだ。でも

ここで取り乱すことは、即ち冷静さを失い、鬼に追いかけられた時に適正な判断ができなくなる可能性が高い!

「ちょっと、二人共、落ちつい・・・・・・」

「落ち着いてなんかいられるか!こんな学校、もう知らねえよ!」

「あたしも!出ていくわ!」

美月の静止を振り切って、彼らは正門の方へと走り出した

「ちょっと待って!」

慌てて三人で追いかける。が、美結たちはかなり速い。しかも、スタートダッシュの差もあって、かなり遠くに見える

あたし達がようやく追いついた時には、二人は我先にと正門に足をかけ、登っていた

今すぐ止めさせないと・・・・・・!

「美結!飛翔!」

叫んで、二人を引き剥がしにかかろうとした瞬間

『ガ・・・・・・ガ・・・・・・脱出者確認。消去』

不穏な声が、スピーカーから流れた。

そして─────

ヒュン・・・・・ヒュン

二人の鬼が移転してきた

女の子と、男の子

その手には、しっかりだサバイバルナイフが握られ、聖歌が持つ懐中電灯の明かりに反射して、キラキラと輝いて見える

でも、それが怖い

「「だっしゅつしゃ、みーつけた!」」

男の子は飛翔を

女の子は美結の足にナイフを持っていない方の手をかけた。

まだ、二人の足首は、鬼くらいの身長で、手を伸ばせば届く範囲だったのだ

いきなり下へと力がかかった二人は、ガクッとバランスを崩す

凄い、怪力・・・・・・!

そのまま、鬼は勢いよく地面に叩きつけ、馬乗りになる

「ひっ・・・・・・!」

美結が小さな悲鳴を漏らす。それでも、女の子はにこにこ顔で、ナイフを握りしめ、そして────

ザクッ・・・・・・ザクッ!

ザクザク!ザシュッ!

ナイフで、美結の身体を切り始めた

同じように、飛翔も無残な姿になっていく