「普通に声をかけたらいいだろ」


「それじゃ逃げられるかもしれないでしょ」


柚木さんは僕の腕を掴んで早足で店外へ向かい、書店の裏手へと向かった。


裏手には柚木さんの言う従業員入口と、搬入口がある。


「自転車はないみたいだね」


周囲を見回して柚木さんはそう言った。