好きだって、最初に言ったのは何時だったっけ?
あんまりよく覚えてねぇけど、あん時の陽菜さんの驚きと困惑の混じった顔に、失敗したと思ったのは確かだ。
好き、とか。
何言ってんだ、俺は。
こんなの、一方通行でしかないって分かってんのに。
陽菜さんがまた1つ傷付くの、分かってるはずなのに。
でも、陽菜さんは俺に向かって真剣な視線を向けてから、今までみたいな感じじゃなくてたっぷり時間を掛けて俺を見つめて、ふぅ、と一呼吸した。
「凪月…」
「…なに?」
「待て」
「は?」
陽菜さんは、一言そう言うとくるりと背中を向けて歩き出してしまう。
俺は、その意味が分からなくて、陽菜さんの後ろ姿をただジッと眺めることしか出来なかった。
「てか、なんの、待て…だよ…?」
陽菜さんは、時たま不思議なことを言う。
そして、俺に対して特別なのかと思わせるようなことをする。
特別、とか。
まさか有り得ないだろ。



