「はー、久しぶりにこんなに笑いました」


目を拭って、お腹を押さえる黒木さん。


「そ、そんなに面白かったですか?」


私的にはいくら役といえ、結構思い切ったこと言ったつもりだったんだけど……


「はい。それはもう、最高でした。くさいは、男が言われて1番傷つく言葉だと言われています。まさかそれが出てくるとは思わなかったので、驚きました」


そ、そうだったんだ……


結果的には、良かった……のかな?


「お嬢様なら、たとえどんな男がやって来ても突っぱねそうですね」


「黒木さん……楽しんでません?」


さっきのクズ役だって、本当は結構楽しんでたんじゃ?

ジト目で見れば、黒木さんはクスクス笑う。


ほんと、私が見る限りじゃ、こんなに表情豊かなのに。


エントランスで見た人が、どう頑張っても同一人物だと思えない。


「そんなことは断じてございません。全て、大切な俺のお嬢様のためですから」


俺、の……


「ですが、お嬢様には常に私がいるということをお忘れなく。どんなことがあろうとも、命をかけてお守り致しますから」


「黒木さん……」


いつになく真剣な目でそう言われてしまえば、こっちもはいとしか言えなくなる。


「それと……」