「黒木」


窓を開け、一色さんという人は十夜さんを呼んだ。


「すぐに済みますので。失礼致します、お嬢様」


優しい目で頭をポンポンとし、私をそっと下ろすと項垂れる最低野郎につかつかと歩み寄る。


そして、


「っ!!」


グッと胸元を掴み上げ、苦しむやつを気にもとめず鋭い眼光で言い放った。


「二度とその汚い手で美都にふれるな近づくな。
もし次同じことがあれば、今度はお前を殺す」


ドンッと胸元を押すと、ゲホゲホと咳き込むやつを最低温度の冷たい目で見下ろした。


「消えろ」


その後一色さんを見て頷くと、発進する車を見届け、また戻ってきた。



「あ、あの十夜さ─────」


「美都」


「えっ」


「美都………」


助けてもらったお礼を言おうとした瞬間。

全身を包み込むかのように、強く強く抱きしめられた。