「なんで逃げるの?」
俺たちは濡れていることも気にせずに足を止めた。
美憂の華奢な背中がより一層小さく見えて、俺はゆっくりと美憂の身体に触れてこっちを向かせた。
「あの薬はなに?正直に言ってよ」
どこかで雷が鳴っている。イヤなことの前兆みたいな音に、美憂の肩を掴む手が自然と強くなった。
「ごめん、千紘くん……」
美憂が俺の手と重なるように、ぎゅっとした。
「私、千紘くんにずっと黙ってることがあった。何度も言おうとしたんだけど言えなくて……」
「……なに?」
美憂はやっと顔を上げた。
目が合って、それはひどく悲しい瞳をしていた。
「私ね、心臓の病気なの」
雷鳴と同じくらい自分の鼓動が大きく鳴った。
「黙っててごめんなさい……っ」と、泣く美憂を俺はそっと抱きしめる。
やっぱり体温は氷みたいに冷えていた。



