喧騒としていた教室は担任が入ってくると落ち着いた。
朝のホームルームが終わり1限目は古典。漢文編と書かれた教科書を広げながら、先生の声に合わせて文を追う。
チラッと横を見ると、柴田は退屈そうに頬杖をついていた。
なにひとつ似てないと思っていた柴田と美憂。
だけど柴田が妹だと知り、美憂が姉だと認識した今は不思議と面影が重なって見える。
色が白いところとか、まつ毛が長いところとか、前髪で見え隠れしている瞳もふたりはそっくりだ。
――『この前、妹とね…』
そう楽しく柴田のことを話していた出来事がよみがえってくる。
たしかあれも雨の日だった。急な通り雨で動けなくなってしまった美憂を俺はタバコ屋まで迎えにいったのだ。
「美憂」
声をかけると不安そうに空を見上げていた顔が明るくなった。
「千紘くん。わざわざごめんね。まさか雨が降るなんて思ってなかったから……」
「仕方ないよ。天気予報は晴れだって言ってたし」
「今日の予定、どうする?」
週末の日曜日は必ず美憂とデートをする日になっていた。
先週から決まっていたサイクリング。利根川が流れる土手をまっすぐに走り、少し遠くの街に行ってみようと約束してたのだ。



