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頭がいい男は好きじゃない。
隙がないように見えるから。
でもアイツは隙だらけだ。
いつかその穴ぼこだらけの隙間から染み込んだ雨で溶けてしまうんじゃないかってぐらい、脆い。
――『なんで、そのシャーペン柴田が持ってんの?』
そんな泣きそうな顔で私に言わないで。
公園を出て三時間が過ぎていた。私は小暮千紘の質問に答えることなく、そのまま逃げてしまった。
そして当然行くところもないので、あれからずっと家のドアの前で膝を抱えている。
「うわっ!」
錆びれアパートの階段を登ってくる足音。バチバチと通路にはお化け電球が光っていて、座敷わらしのように座り込んでいる私を見つけてお父さんがビックリしていた。
「お帰りなさい」
お父さんは作業服のままだった。
運よく仕事から帰ってくる日で本当によかった。じゃなかったら私は数日間、路頭に迷うことになっていたかもしれない。