きみとなら、雨に濡れたい




「べつに私だって好きで勉強してるわけじゃない。ただやることもないし行くところもないからそれで……」

「ん?どういうこと?」


「……家の鍵穴が壊れて開かなくなったの」

柴田がため息まじりに言った。


「鍵穴が壊れるとか、そんなことある?」

すると柴田が「あるの!」と、イライラした様子で再び教科書に目を向けた。


怒らせたかったわけじゃない。なのに柴田はいつもなにかに怒っている気がする。


「親は?」

もうすぐ夕暮れだし、今日は肌寒い。家の中に入れず仕方なくここで暇を潰している柴田に、頼れる友達がいないことは知っている。


「……お父さんがいる。けど、帰ってくるのは夜みたい」

「それまでこの場所にいるつもり?」

「………」

柴田は俺の質問に無視をした。その背中が〝アンタには関係ない〟と言っているように感じた。


あまのじゃく。分からず屋。怒りん坊。

本当に柴田は、可愛くない。


「なんのつもり?」

帰ろうと一旦は方向転換したけれど、やっぱり柴田を放っておけずに、俺は傘を閉じて東屋の中に入っていた。


「俺も暇だから勉強する」

柴田の前に座った俺はカバンから数学の教科書を取り出した。