きみとなら、雨に濡れたい




『ねえ、千紘くん』


美憂は一緒に出掛けたあの日から毎日のように声をかけてきた。

金魚の世話もふたりでやるようになって、4匹の金魚に名前をつけていたことは俺たちだけの秘密だった。


『水飴症候群って知ってる?』

そう言われたのはいつだったかな。


たしか中学2年になってまた同じクラスになり、梅雨入りが発表された頃だったと思う。

美憂はあの時、青い鳥で買ったばかりのピンク色の傘を差してた。スタンプカードが全部貯まったよ、なんてすっかり店の常連になってしまった美憂は、唐突に語りはじめたのだ。


『ドロップシンドローム?』

俺は聞き慣れない単語に首を傾げた。


『この町の言い伝えだよ』

俺は正直、また美憂の物好きな話だろうと思った。


美憂は日頃から本当かどうか定かではないことをよく俺に聞かせてくれた。夜に口笛を吹いたらヘビが出るとか、蓮(はす)の葉を頭にかぶると背が伸びないとか。

だから今回もそんな迷信のひとつだろうと、とりあえず水飴症候群の続きに耳を傾ける。


『大昔にね、ちっとも雨が降らない大干ばつがあったの。食料不足でみんな途方に暮れているところに……って、千紘くん聞いてる?』

あくびしていたところを見られてしまい怒られた。


『うん。聞いてる聞いてる』

これは美憂の話が退屈だったからじゃない。ただ単に夜更かしして寝不足だっただけ。

美憂の機嫌を直すように『それで?』と尋ねる。