きみとなら、雨に濡れたい




そして学校が終わって、俺はとぼとぼと家路へと歩いていた。坂道を下ったタバコ屋の前で少しだけ足を止める。

……柴田は帰り道、大丈夫だろうか。


一応聞いてみようと思ったけれど、ホームルームが終わるとすぐに柴田は廊下に出てしまったし、わざわざ追いかけてまで尋ねるのはヘンだと思ったから。

まあ、たぶん柴田は職員室へと行ったんだろう。

あそこには忘れ物の傘がたくさんあるから、すぐに貸してもらえるはずだ。


タバコ屋を通りすぎたあとは、田んぼだらけの湿った道が広がって、雨の匂いが濃い。


もうずいぶんと眠気が襲ってくるような晴れた日の匂いは嗅いでない。

それがどんなものだったのか思い出せないほど一年という時間は長い。


晴れた日の匂いを忘れてしまったように、いつか美憂のことも忘れてしまう日が来るだろうか。

美憂の笑顔や声や仕草。

なにひとつ忘れたくないのに、こうして時間が過ぎていくたびに、ひとつずつ雨に流されてしまいそうで怖くなる。