きみとなら、雨に濡れたい



高木さんを狙っている男たちがザワッとしていたけれど、本人はまったく気にしていない様子。

注目を浴びるのはイヤだな……と思いつつ、高木さんの誘いを断る勇気も俺にはなかった。


俺たちの通う西中学校は町の中心部に建っている。

周りは山ばかりなので、たまにタヌキがグラウンドにいたり、数匹の猫が日向ぼっこしてたり。どうやら田舎町は自然と生き物にとっては快適な環境らしい。


「ねえ、どこに行くの?」

高木さんの歩くスピードは速かった。まるで時間に余裕がないみたいに。


「あと5分で電車来ちゃうから急ごう」

「待って。電車に乗るの?」

「そうだよ。ほら、早く!」


俺は無理やり手を引かれてしまった。細くて長い指に、柔らかい手の感触。やっぱりこんなことされたら男は勘違いすると思う。

高木さんのお目当ての電車には乗ることができた。


都心とは違い電車は30分に一本しか来ないし、車両は4両編成しかなくて、車内は貸し切りってぐらいガラガラだった。

高木さんは「ふう……」と、出入り口に近い場所に座った。俺はなんとなく隣には行かずに向かい側の席に腰を下ろす。


「食べる?」と、高木さんはぶどう味のチューインガムを俺に見せた。俺はため息をついて「とりあえずどこに行くかだけ教えて」と聞いた。