彼女との思い出は楽しいことばかりだったけれど、今は込み上げてくる苦しさのほうが強い。
そんなことを思いながらあっという間に学校が終わって、雨の音がより響く靴箱へと向かう。
昇降口には学年ごとの傘立てがあり、窮屈そうにたくさんの傘が身を寄せ合っている。
高校生にもなればみんな見た目よりも手軽なものを選ぶので、ほとんどがコンビニのビニール傘。俺はスッと傘を一本抜き取った。
これが俺の傘なのかどうか曖昧だけれど、名前が書いてあるわけでもないし、濡れなければなんだっていい。
上履きからローファーに履き替えて、屋根がある外へと出た。
次々と傘を広げては帰っていく生徒たちを横目に、誰かが俺の横へと並んだ。
「あ……」
心の中で言うはずが、思わず声として漏れる。
隣にいたのは、柴田だった。
気の知れた友人なら『よく会うね』なんて声をかけるところだけど、残念ながらそういう間柄でもないし、〝なんでまたいるの〟と呆れた顔をしてきたもんだから、俺も不機嫌さをむき出しにする。
お互いにピリピリとした空気を放しつつ、先に傘を開いたのは柴田のほう。



