きみとなら、雨に濡れたい




後から聞いた話では、午前中の誰もお見舞いが来ていない時だったらしい。

お母さんもまた朝から仕事で夕方から着替えを持ってくると約束していたらしいし、看護師が血圧を測りに行った時はまだ元気だったと言っていた。


誰にも苦しい顔を見せないで逝くなんて、美憂らしいと思った。

美憂が最後にみんなに見せたのは、眠るような綺麗な顔だけ。

そこにツラさなんてひと欠片も残さずに、本当に天使のような顔で、別の世界へと行ってしまった。


美憂の病気は理解していた。

薬の種類も副作用も。どんなことが心臓に負担がかかることで、どんなことなら心臓に負担をかけないことのか。

家族として、十分すぎるぐらい理解していた。


でも、たったひとつ見落としていたことがあったとするならば……。

美憂が本当に死んでしまうなんて、思ってなかったことだ。


命に関わる病気だと知っていたのに。私は隣にいて一度も美憂がいなくなることなんて想像してなかった。

いつも鬱陶しいぐらいひっついてきて。姉なのにまるで妹みたいに私を頼りにするばかりで。


離れていくのは、私のほうだと思ってた。


美憂が私から離れないのは知っていたから、私から突き放してやろうと。

私がいなくてもしっかりしてよって。いつまでも一緒にいられるわけじゃないんだからねって、説教してやるつもりだった。


だから、美憂が私から離れていくことを、私はこれっぽっちも考えたことなんてなかったのだ。


美憂がいなければって思ってたくせに。

美憂に対して汚い感情ばかり抱いていたくせに。


今さらどうしようもなく寂しくなっているなんて、私はなんてバカなんだろう。