きみとなら、雨に濡れたい




柴田の手元には教科書とノートが広げられていたけれど、シャーペンは止まったまま。勉強というより、考え事をしていたように感じた。


「ってか、あっちのテーブル空いてるけど」

俺が隣に座ると、柴田はため息をついた。


「でも、ここも空いてるじゃん」

そう言い返すと、さすがに呆れた表情をされてしまった。

空から打つ雨が、綺麗な滴になって窓に張り付いている。そんな雨の動きを見ながら、柴田が不器用に呟いた。


「……昨日は、ありがとう」

大嫌いだと俺を突き放した柴田。

それでも引き下がらなかったのは、放っておけないという俺の勝手な私情だった。

お礼を言ってくるということは、少しでも柴田の救いになれていたのだろうか。そうだったら、嬉しいけど。


「俺さ、ずっと勘違いしてたんだ」

毎日思い出していた美憂のこと。その思い出の中には、いつだってまだ見ぬ〝妹〟の存在があった。


「てっきり、一回りぐらい歳の離れた女の子だと思ってたんだよ」

美憂があまりに溺愛してるから、姉目線として小さな妹を可愛がっているのだと。


「違ったでしょ。想像していた妹と」

「まあな」

「私もずいぶん勘違いしてた。美憂が話してたアンタは誠実で穏やかで。目が離せない美憂のことを包みこむような包容力があって、もっと大人びた人だと思ってたから」


美憂が柴田にどのようなことを話していたのかは分からない。

けれど俺たちは美憂を通して知らない間に繋がっていたのだ。顔も声も知らなかった何年も前から。