きみとなら、雨に濡れたい





「ふふ、ハズレ」

美憂はベッドの上で身体を起こしながら、背中に薄いクッションを挟んで寄りかかっていた。


「じゃあ、教えてよ」

差し入れで置いてあったリンゴを果物ナイフで切り終えるまで15分もかかってしまった。


「紫陽花の花言葉はいっぱいあるんだよ。移り気、忍耐、冷淡、傲慢とか」

「あんまりいい意味じゃないんだね」

「うーん、でもね」と、美憂が俺の剥いたリンゴをひと口だけかじって言った。


「紫陽花には〝強い絆〟って意味もあるんだよ。多くの小さな花びらがひとつの花を形作っているからなんだって。なんだか素敵じゃない?」

そう笑う美憂は以前よりずいぶんと痩せてしまった。


強い薬を投与しているため食欲がなくて、リンゴだってひと口かじるのがやっと。それでも美憂は俺が病室にいると、こうして普段どおり話の主導権を握ってくれる。


楽しい話、嬉しい話、綺麗な話をたくさんしてくれて、絶対にツラい顔は見せない。

けれど、腕に繋がれている点滴が痛々しくて、美憂の心臓病は薬で抑えるしか方法がないほど深刻になっていた。


面会時間は美憂の体調も考えて夕方までと決まっていた。休日なら長く一緒にいられるけれど、学校がある日は一時間しか顔を見ることができない。

かと言って学校を休むと言うと美憂は『絶対にダメ』と、許してくれなかった。