きみとなら、雨に濡れたい




「はい」

テーブルに置かれたアイスティー。お母さんは紅茶が好きだからよく海外のものを取り寄せたりしてた。

それに影響されて美憂も紅茶好きだった。


一口飲むと茶葉の香りが鼻の奥に広がる。 紅茶も家具の配置も私が座る場所も、なにひとつ昔と変わってない。


「ごめんね。ずっと連絡できなくて」

お母さんが私の正面に座った。


「責任ある仕事を任されててね。今は土日関係なく働きっぱなし」

「……今日は?」

「八勤明けのやっとの休みの日」


元々細かったお母さんは以前より痩せていた。なにを話したらいいのか分からずにただアイスティーを口に運ぶだけの私をお母さんはじっと見つめてくる。


「な、なに?」

「顔つきがずいぶん大人っぽくなったね」


それは少し俯瞰的な言い方だった。


お母さんの視線をこんなにも独り占めしたのは、いつ以来だろう。

いつもいつだって、その瞳に私が映ることはなかった。


カランと氷が崩れて音が鳴った。リビングに漂ってくるお線香の香り。それは隣の和室からで、あそこには美憂の仏壇がある。

本当は真っ先に手を会わせなきゃいけないんだろうけど、今はとてもできる気分じゃない。