自分を大切にして欲しかった。

……いつもいつもあいつは他人のことばっかりで、自分のことをとことん蔑ろにする。

人付き合いが下手なせいで親戚や友達に散々死ねっていわれてきたから、そういう風に考えるのが当たり前になってしまったんだ。

そんなアイツを変えてやりたくて友達になったのに、結局あいつは変わらなくて、ずっと自分を大切にしなかった。

……俺の自殺を止めてなかったら、もう少しくらい生きれたかもしれないのに。

……走らなければよかった。……俺の後なんか、追ってこなければ良かったんだ。安静に過ごしてればよかった。
きっとそうしたら、もっと生きられた。

……それがわかっていたくせに、あいつは自分の命より俺を優先した。


潤が真後ろにきて、俺の頭をそっと撫でた。


「……潤」

後ろを向いて潤の顔を見ると、潤は大粒の涙を流していた。

「……なんで彼がそれぐらい自分のことより君を優先したのか、教えてあげようか」

涙を流している俺たちを見ながら、爽月さんはいう。

「君が彼に変わって欲しいと思っているのと同じように、彼もずっと君に変わって欲しいと思っていたからだよ」


「……は?」

「……君はあの子の人生を変えたんだ」