「……いいお姉さん、だったんですね」


めぐはそう確かめるように言った。




「あぁ。彼女はとても素敵な人だった。……僕は、彼女が異様なまでに奈々絵くんに熱心なのが気に入らなくて、彼を嫌っていた。




所謂嫉妬だ。あまりに大人気ない。しかし、その大人気なさが彼を壊してしまった。





……結局、僕も含め奈々絵くんが沢山の人に嫌われていたのは、彼が無口で、愛想のない子だったからだ。何考えてるかよくわからなくて、気持ち悪かったんだよ。しかし紫苑さんは、子供なのにそういうのを気にしない、きちんとした人だった。






僕が奈々絵くんが不器用ないい子だと認識したのは、紫苑さんが死んでから三年がすぎた頃だった。彼はその頃、既に余命宣告を受けていた。
僕に死ねと言われて首を絞めかけられたせいで自殺をしようとして失敗して、大病を患った後だった。

……僕は、あの子の良さに気づくのも、罪に気づくのも遅すぎたんだ」



――首を絞めただって?



その言葉を聞いた瞬間、俺の何かが壊れた。





俺は爽月さんに近づいて、奴の頬を思いっきり殴った。





「……なんだそれ。

ふざけてんのか!あいつの魅力に気づくのが遅すぎんだよ!あいつはもう、帰ってこないんだよ!おまえのせいで!」



爽月さんの胸ぐらを掴みあげて、俺は罵倒した。