「……空我さ、自分みたいな扱い受けた奴らがいるとこで働けば?」

小声で潤は言う。

「……なにそれ」

「孤児院とか、精神科とかで働けば? そうすれば、ちょっといい考えじゃないかもしんないけどさ、自分も受け入れられるようになんじゃねぇの。酷い扱い受けたのは自分だけじゃないと思えるようになって」

……そんなの考えたことなかった。

「他人なんて利用できるだけ利用していいんだよ。酷いことしなければ、恨まれねぇんだから」

「……でも」

利用される側はどう思うんだ。理由が非道徳すぎる。

「いいから利用しろよ。でないと幸せになれねぇぞ。母親に抵抗できなかった自分も、俺や奈々絵に隠し事してきた自分も赦せるようになりたいなら、それしかねぇよ。それが一番手っ取り早い」

俺の頭を撫でて、潤は笑った。

「そんな不純でいいのか」


「いんだよ。一般受験は志望理由聞かれねぇんだから。お前はもっと独りじゃないのを自覚しろ。な?」

「……っ!」

潤の胸に顔をうずめ、涙を流しながら俺は頷いた。