【短】どこまでも透明な水の底



誰か、コンビニの前で蹲ってる?
しかも、こんな時間に…女一人で…?


たっぷり残業をして来た俺が、今この店の前を通り過ぎている時刻は、繁華街ではネオンがひしめくくらいの時間帯で、20歳そこそこだろう女性…というよりここは女の子というべきだろうか…が、一人でいる時間帯ではない。


「きみ…大丈夫か?」


気が付けば声を掛けていた。
何時もならば、素通りしてもおかしくないはずなのに、どうして今夜に限ってこんなことをしているんだろう、自分は?
そんな疑問を持ちつつも、俺は彼女にさしていた傘を上から差し出した。


ずぶ濡れだった。
まるで捨てられた仔猫みたいに。
小刻みに震えていて、見ていられなかったんだ。