好きだったものも、大事だったものも、



全て
いとも容易く音を立てて崩れた。






もう壊れない保証が、どこにある?






「……妖斗、朝飯できたけど」






部屋がノックされ、光にぃの声が聞こえてきた。



タイミング悪っ。





「……食欲無い」




「なぁ、妖斗…………翼咲の血が止まんないんだけど」



ドアをかすかに開けて言うと、光にぃは
泣きそうな顔をして俺に助けを求めてきた。





「…………長谷川総合病院に空我先生って人がいるから、その人に見てもらって。





その人なら、状況によっては治療費さえ払えば親に会わずに手術できる」



「妖斗、お前……」


光にぃは、俺を見て目を見開いた。







「言っとくけど、怪我をさせたのはやりたくてしたから。……翼にぃを病院に行かせたかったからとかじゃない。






お前らのためじゃなくて、俺のため。……知り合いが目の前で死ぬのはもう嫌なだけだから」







そこまで言ったところでドアを閉め、俺は内側から部屋の鍵を占めた。







「妖斗、ありがとう」







……お礼とか言ってんじゃねぇよ、バカにぃが。