十階に着いた俺は、1015号室と書かれた病室のドアを、ガラッとはっきりとした効果音がする勢いで開けた。






「……兄さん、俺今日も生きたよ」




病室のベッドに横たわった兄さんに、俺は
そう声をかけた。





……次楽暁斗(ツキラクアキト)。10年前。つまりは両親が殺された日、植物状態にはされたが、どうにか死なずには済んで、辛うじて兄は生きていた。




凶器で叩かれたせいで凹み、痛そうな頭部。
食事替わりの点滴だけで賄われるその身体は肉がなく、異様な程やせ細っている。まるで骸骨に薄い皮をつけたみたいだ。それでも、腰まで伸びた黒髪が、兄がまだ生きていることを俺に実感させる。





俺はベッドの奥にあった窓のそばにある花瓶に、ガーベラの花束を指した。