俺はすぐさま妖斗を自分の部屋に入れた。
「妖斗、お前身長は?」
ベットの前にあったクローゼットを開け、俺は妖斗に合いそうな服を探しながら聞いた。
「……171」
「俺は174」
勝った。そう思うとつい、頬が緩んだ。光輝は178だからなぁ……。
「……翼(ツバ)にぃって、負けず嫌い?」
猫背気味の妖斗が俺の背後きて、不思議そうに尋ねてくる。
「翼にぃ……?」
どんな呼び方だよ?
俺は後ろに振り向いて、首を傾げた。
「……ごめん、にぃって呼ぶの昔からの癖。兄さんのこと、暁にぃって呼んでたから。それに、普通に兄さんって呼ぶと、どうしても本当の兄さんのこと思い出しちゃうから。…………嫌なら、翼咲兄さんって呼ぶけど」
躊躇いがちに妖斗は言う。
こいつ、さては無自覚の甘え上手か。
「……翼咲か翼にぃのまんま」
「……翼にぃ」
妖斗は、俺の耳元で囁くように言った。
……兄になるのも、こいつなら悪くないか。
可愛げのある弟だ。



