「……そうか。
翼咲でいいよ、妖斗。同い年だろ?」
俺は、妖斗と向き合おうと思った。
「……呼び捨てにはできません。人なんて、信用出来ないですから」
妖斗は今にも泣きそうな顔をして言った。
――優しくしてやりたい。光輝が奪われたら嫌だけど、優しくしてやりたい。泣き虫のこいつの頃の底から笑った顔を見てみたい。
「妖斗!お前も、光輝に引き取って貰ったんだろう?だったら、今日からお前は義理の俺の弟だ。兄相手に敬語はやめろよ?」
俺は妖斗を見て、笑って言った。
妖斗は突然震えた手で俺の腕をつかみ、涙を流し始めた。
「妖斗?どした?」
「……俺、5歳の時に兄さんを喰蝶に目の前で植物状態にされて……だから……っ!」
「今日から、俺もお前の兄になってやるよ。大丈夫だ。俺は離れたりしないから……な?」
――味方になろう。
妖斗を助けたい。
光輝が奪われるのは嫌だけど、妖斗は助けたい。
そう思ったら、いつの間にかそんな言葉を言っていた。
どうやら俺も、意外と世話焼きらしい。