「答えろよ、おい」



俺の胸グラを掴みあげ、翼咲さんは言う。



「……ッ」




「……なんでこんなことしてんだよ!」

翼咲さんは俺の顔に向かって手を振りあげて、叫んだ。

――殴られる!

俺は翼咲さんから目を背けた。

翼咲さんが俺を殴る前に、翼咲さんの頭を光輝さんが後ろから叩いた。



「痛ッ!?」



翼咲さんは俺の胸ぐらから手を離し、痛そうな顔をして、光輝さんを見た。





「お前はぁ~、何帰ってきて早々に新入り脅してんの?」




そう言い、光輝さんはとても不機嫌な顔をして翼咲さんから携帯を奪い取った。






「………は? 何だよこれ」








その戸惑いの声が、俺の耳にはやけに大きく響いた気がした。



……引かれた。受け入れて貰えなかった。


ほら、どうせこうなるんだ。





俺は、だから思ってたんだよ。









……………他人なんか信用出来ないって。




「おい、妖斗ッ!!」






光輝さんの声を無視して、俺は逃げた。








階段をおりてすぐのところにあった教室に入り、俺は鍵を閉めた。







このままアジト自体から逃げ出せばいいのに、





俺には、そんなことをする強さなんてなかったんだ。