「妖斗ー、叫び声なんかあげてどうしたの?」




洗面所から寝間着姿で出てきた女が、ベッドの上にいる俺に近づいてくる。


ここはラブホだ。


俺は毎日をここか、あるいは俺を買ってくれる女の家で過ごしている。


俺はそこで女を満足させて、その礼に金を貰うんだ。



「……怖い夢見ただけ」

小さな震えた声で言う。もちろん、わざとだ。


「へぇ?泣いちゃって、妖斗可愛ー。
拭ってあげる」


女は、俺の涙が伝う頬にキスをした。

――気持ち悪い。
咄嗟によぎったその想いを、俺はすぐに思考の外に追いやった。


「ちょっと利亜さん、子供扱いはやめてくれません?」

俺は彼女を押し倒し、そう得意げに言った。



この人がくれるのは一万だ。一万あれば、ほんのすこしだけど、借金が減る。

それなのに不快だなんて思ってられない。


俺は必死で自分にそう言い聞かせた。それから、俺はただただ彼女を抱いた。