4月。
この3ヶ月の間、俺は光にぃと聖里奈に参考書で小中の5教科の勉強を病院の中で教えてもらい、
高等部の始業式である今日に、晴れて退院の運びとなった。
3ヶ月前の成人式の日と変わらず兄さんの病室にいた俺は、幾分か動かしやすくなった足を使って、ベットの上に座った。
「………兄さん、今日俺は生まれて初めて学校に行くよ。
兄さんみたいに沢山友達ができるかって言われたらちょっと不安だけど……1年は翼にぃと同じクラスだし、頑張るよ」
俺は、そっと兄さんの細い手を握った。
――ねぇ兄さん、見てて。
俺は待ち焦がれていた学校生活を、
絶対に楽しんでみせるから……。
その時、兄さんが俺の手をゆっくりと握り返してきた。
「兄さん……?」
俺は、思わず兄さんの体を疑り深く見つめた。
「あ、と……」
か細くて、今にも消え入りそうなほどに小さくて、頼りげのない声が俺の耳に届いた。



