「……ねぇ総長さん、貴方が今度は私の玩具になってみる?」
利亜は妖斗が片手に握っていたバタフライナイフを奪い取り、俺の首の前に突きつけた。
そのナイフは紅い血が付着して、真っ赤に染め上がっていた。
「………おい、それ、妖斗の血だろ」
「そうねー、可愛い馬鹿犬の血よ?」
俺は目の前にあった利亜の両手を振り払い、
ナイフを床に投げ捨てさせた。
「……なぁ、知ってるか?刃物って、暴力って、された方はどんだけ傷つくかお前は知ってるか?
信じてた奴にされた時のどうしようもない絶望感をお前は知ってるか?
知るわけねぇよな。……いいよな、当事者はお気楽で。被害者だけがすげぇ傷ついて、生きるのも嫌になるんだ。
あいつが壊れたのはあんたのせいなんだよ!!!あんたさえいなければ、あいつは地獄を知らずに済んだのに……っ」
気がつけば、俺は涙を流していた。
瞳から溢れだす涙は、留まる事を知らない。
妖斗がどんだけ傷ついたかをこいつはこれからも知らずにのうのうと生きていくだなんて、俺は認めたくなかった。
そんなんじゃあ、まるで俺のクソ親父じゃねぇかよ……。
ピーポーピーポー。
その時、待ち焦がれていた車の音が2つ同時に
俺達の耳に届いた。