「……確か、小2の時だったかな。母親がな、仕事から帰ってこなくなったんだ。たぶん、あいつの他にいい男見つけて、どっかほっつき歩くようになったんだと思う。







それでいいと思ったよ。さっさと離婚でもすれば万事解決じゃん?






でもな……実際、現実はそんなに甘くなった。





父親はさ、さんざん暴力奮ったくせに、母親の帰りが遅いとすげぇキレて、暴力はますます悪化した。あんなんだだの糞だよ。





気の弱い母親は、別れようとか言えなくて、当然子供の俺にそういうことも出来なくてさ………。




いつしか、母親は父親から逃げるように一切家に帰ってこなくなった。それで、父親に内緒で俺にあって俺の食事代とかそういう諸々のかかるお金を渡してきたんだよ。








………翼咲、母親が家に帰ってこなかったら、暴力の矛先は誰に行くと思う?」







光輝は、ベッドの上に座っている俺を見ながら、自嘲気味に笑った。





「まさか……っ」




嫌な想像が頭をよぎった。







「そ。…………俺だったんだよ」