気がついたら、傷のこと以外ほとんど全て喋っていた。
瞳から涙がこぼれ落ちた。
「……そんなこと、無いよ」
突如、桃華は自分の真横に座った俺を、そう言って優しく抱いた。
「……年下のくせに、姉貴づらすんな」
口から出た声は、掠れてちっちゃくて、
説得力なんて欠片もなかった。
「年上の癖に、頼りない」
そう言割れた瞬間、俺の何かが壊れた。
「……うっ、あっ……」
壊れたみたいに、嗚咽を漏らして
泣きじゃくる俺を、桃華はただ抱き続けた。
「……分かるよ、翼咲の気持ち」
「そんなん嘘だ。……絶対誰も理解してくれない。今も生きている大事な人に突き放されるのが、どんなに嫌か」
大切な人を失ったことなんてない癖に、と妖斗はいった。
俺は、気づいたらすべて消えてたよ。
死ぬ方が辛いのは、そりゃそうだと思う。
でも、……俺だって辛い。
「ううん、分かるよ。
私ね、……AIDSなの」
桃華が言った言葉は、俺の心に毒針みたいに突き刺さった。
「なっ、は……?」